「週末にたっぷり寝だめしたはずなのに、月曜の朝はいつも体が鉛のように重い…」 「夜、ベッドに入っても目が冴えてしまい、日中は突然、意識が途切れるような眠気に襲われる…」 もし、あなたがこのような慢性的な不調に悩まされているなら、その原因は単なる「気合」や「体質」の問題ではないかもしれません。それは、あなたの体内で 毎日続いている「時差ぼけ」のサイン。私たちの心と体のパフォーマンスを根底から支える、極めて精巧な「体内時計(生物時計)」 のリズムが乱れている証拠なのです。 この記事は、よくある睡眠のTIPSをまとめただけの気休めではありません。2017年にノーベル生理学・医学賞の対象となった研究分野でもある「時間生物学」の知見に基づき、あなたの不調の根本原因を解き明かし、日々のパフォーマンスを最大化するための 科学的なアプローチ をご提案します。少し長くなりますが、読み終える頃には、ご自身の心と体をこれまでとは全く違う解像度で見つめ直せるはずです。 生命の基本リズムを刻む「見えない指揮者」の正体 私たちの体は、約37兆個の細胞が集まってできた、壮大なオーケストラに例えられます。心臓の鼓動、ホルモンの分泌、体温の調節、消化活動、そして睡眠と覚醒。これら一つ一つの生命活動が、互いに調和し、見事なハーモニーを奏でることで、私たちは健康を維持しています。 そして、この巨大なオーケストラ全体を指揮しているのが 「体内時計」 です。 体内時計(生物時計)とは? :地球の自転、つまり24時間という周期に生命活動を同調させるために、生物が進化の過程で獲得した仕組みです。驚くべきことに、この時計は脳だけでなく、心臓、肝臓、筋肉、皮膚に至るまで、 ほぼ全身の細胞が個々に持っています 。 概日リズム(サーカディアンリズム)とは? :この体内時計によって作り出される、約24時間周期の生理的な活動リズム(睡眠、血圧、ホルモン分泌など)を指します。ラテン語の「circa(約)」と「dies(1日)」を組み合わせた言葉です。 つまり、私たちの体内には「脳の親時計」を頂点とした、無数の「子時計」が存在し、それぞれが連携してリズムを刻んでいるのです。このシステムが正常に機能していれば、オーケストラは最高の演奏(健康な状態)を奏でますが、指揮者のタクトが乱れたり、演奏者(各臓器)がバラバラなテンポで演奏を...
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